グラフィックスに凝った大型タイトルから、アイディア勝負のインディーズまで、数多くのゲームを楽しめるのがPCゲームのいいところ。しかし、ひと口にPCゲームといっても、要求スペックはタイトルによって天と地ほどの差がある。数万円の激安PCで遊べるものもあれば、30万円クラスのゲーミングPCでなければ快適に遊べないものまでさまざまだ。
もちろん、話題の最新パーツをふんだんに使った高性能なゲーミングPCがあれば、どんなタイトルでも快適に遊べるのは事実。しかし、そのために数十万円をポンと出せる人は多くない。
そこでオススメなのが、フルHD(19201080ドット)の高画質設定で快適に遊べるPCを見つけること。もちろんWQHD(2560×1440ドット)や4K(3840×2160ドット)といった高解像度の方が画面が美しくなるのは確かだが、こういった高解像度では要求スペックが跳ね上がり、グラフィックス性能が足りなくなりがち。最悪、ガタガタのコマ送りのような画面になってしまい、ストレスを感じてしまうだろう。
これとは逆に、解像度をHD(1280×720ドット)へと落とせば、低スペックでも動きが滑らかなまま遊べるようになる。しかし今度は画面の粗、ドット感が目立つようになり、最新タイトルなのに少し古いゲームを遊んでいるかのような気分になってしまう。画面が滑らかに動き、それでいて画面の粗も目立たない、そんな絶妙なポイントがフルHDとなるわけだ。
フルHDでゲームが快適に遊べるPCは数多く発売されているが、今回紹介する「AORUS GPC-02V26OC」もそのひとつ。GIGABYTEのゲーミングブランド“AORUS”の名を冠したゲーミングPCだ。その名の通り、キーパーツにGIGABYTE製品が採用されているのはもちろんのこと、組立・検査・出荷のすべてを国内工場で行ない、品質と信頼性を重視しているのが特徴となる。
スペックを見てもらえるとわかるが、話題の最新パーツが使われているわけではなく、地味な印象だ。しかし、ゲームをフルHDの高画質設定で楽しむのに十分な性能となる手堅い構成で、実力やコスパを重視した選定となっていることが伝わってくる。
価格は12万4800円(税別)。これとは別に、ビデオカードをGeForce GTX 1660Superへと変更したモデルも11万4800円(税別)でラインアップされているので、好みでこちらを選ぶのもいいだろう。
このゲーミングPCの実力がどのくらいなのか、実際にベンチマークなどを交えてチェックしていこう。
ベンチマークでゲーミング性能をチェック
重量級のゲームもフルHDでしっかり遊べる!
まずは定番ベンチマークとなる「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FF15ベンチ)でチェック。DirectX 12を使った比較的重ためのベンチマークで、ビデオカードだけでなく、CPU性能も重要となるテストだ。
今回はフルHDでの動作を中心にチェックしていくため、「高品質」(プリセットでの最高画質)、「1920×1080」、「フルスクリーン」という設定で試してみた。この結果を見ていこう。
評価は「快適」。この「快適」というのはスコアが6000~8999の間にある場合の評価となるため、快適の中でも上位寄りのものとなる。なお、公式ページでの説明によれば、「快適な動作が見込めます。グラフィックス設定をより高品質にしても快適に動作すると思われます」とあるので、「AORUS GPC-02V26OC」は、FF15をフルHDの高画質で快適に遊ぶのに十分な性能があることは間違いない。
同じくDirectX 12を使用する「3DMark」の「Time Spy」でもテストしてみた。このテストはフルHDではなく、WQHDでのテストとなるため、今回の目的よりは若干ハードルが高めだ。
結果は7458と期待より若干高めで、GeForce RTX 2060らしいものとなっていた。さすがにWQHDのテストということもあり、Graphifs testのフレームレートが40fps台となってしまっているものの、タイミングがシビアなゲームでない限りは十分だ。軽めなゲームであれば、フルHDどころかWQHDでも快適に遊べるだろう。
最後は、やや重ためなアクションRPG「Borderlands 3」。ベンチマーク機能があるため、この機能を使ってテストした。設定はグラフィックスAPIに「DirectX 12」、解像度は「1920×1080」(フルスクリーン)とし、グラフィックスはプリセットから「ウルトラ」「高」の2通りで試してみた。
結果は、画質を「ウルトラ」にした場合の平均フレームレートが64.6fps、「高」の場合で76.49fpsとなっており、どちらも十分快適にプレイできる範囲だった。このフレームレートはあくまで平均なので、60fpsを割るとシーンによってはカクついてしまう可能性が高くなる。さらに高画質な設定となる「バッドアス」もあるが、快適性を重視するなら「ウルトラ」、もしくは「高」でプレイする方がいいだろう。
ゲーミングPCとしてRyzen 5は性能が低くないの?
気になるCPU性能をチェック
GPUを内蔵したAPUをのぞくデスクトップ向けのRyzenシリーズは、主にRyzen 9、7、5の3つのシリーズがある。ゲーミングPCとなればグラフィックスだけでなくCPUにも高い負荷がかかるため、高速なCPUが望ましい。その観点から考えると、シリーズ中の一番下、Ryzen 5では性能が不足してしまうのではないか……と心配になる。
しかし安心して欲しい。Ryzenシリーズはコア数を考慮したトータル性能でナンバリングしているため、Ryzen 5だからといっても、コア当たりの性能は大きく変わらない。さらにいえば、Ryzen 5 3600Xであっても6コア12スレッドと十分なコア数があり、Ryzenが登場する2017年以前と比べれば、ハイエンドPCに勝るとも劣らないだけの性能があるのだ。
実際にベンチマークソフトでどのくらいの性能になるのかもチェックしてみよう。この性能テストには、定番の「CINEBENCH R20」を使用。これはCGレンダリング速度から性能を独自スコアで測ってくれるもので、このスコアが高ければ高いほど高速なCPUとなる。通常はすべてのコアを使うマルチスレッド時の性能となるが、シングルスレッドの性能も測ることができる。この両方の性能をチェックしたのが、下の結果だ。
CPUのスコアは3714pts(マルチスレッド性能)、CPU(Single Core)のスコアは502pts(シングルスレッド性能)となっているが、このスコア単体では高いか低いかよくわからない。そこで過去のデータから値の近いCPUがないか探してみたところ、Core i7-9700KのスコアがCPUで3753pts、CPU(Single Core)で499ptsと、非常に近いものとなっていた。
Core i7-9700Kとは世代の古い第9世代になるとはいえ、インテルではハイスペックモデルとなるCPU。このCPUと互角となるのだから、Ryzen 5 3600Xが遅いハズがない。
もちろん、上位モデルのRyzenと比べればコア数が少ないだけに性能面では見劣りしてしまうが、ゲームに限って言えば、実はそうでもない。マルチスレッドへの対応が進んできているとはいえ、その多くが4スレッド程度。多いものでも8スレッド程度しか使わないため、コア数が多いからといって有利になるとは限らないのだ。
試しに「Borderlands 3」でベンチマークを実行し、タスクマネージャーからCPUの負荷を見てみよう。
総合のCPU負荷は軽いシーンで20%前後、最も重たいシーンでも40%くらいしかなく、6コア12スレッドのRyzen 5 3600Xでも余裕がある。Borderlands 3は各論理コアへの分散がかなりうまくいっている方だが、それでも、40%前後が7つ、10%前後が5つといったように、それなりに偏っていた。すでに論理コア数は十分余裕があり、これ以上増えたところで性能が上がることはなさそうだ。
なお、これだけCPUに余裕があれば、実況配信や録画しながらのプレイであっても、ゲームの速度へ影響はほとんどないだろう。そういう意味でも、Ryzen 5 3600Xはゲームに十分な性能があるといえる。
フルHDでのゲームプレイに十分な性能があるということはベンチマークからわかったが、PCとしての気になる点といえば、使用されているパーツが何か、内部がどうなっているかという点だ。実際に「AORUS GPC-02V26OC」の内部をチェックしていこう。
ガラスのサイドパネルを開けてまず気づくのが、内部の空間が広いこと。これは、採用しているマザーボード「B450M S2H」が小型のマイクロATXとなっていることや、電源がカバーに隠され本体下部に配置されていること、そして棚のようなシャドウベイがないことによる。
空間に余裕があるということは、それだけ空気の流れを阻害するものがないという意味だ。「AORUS GPC-02V26OC」のように、空冷クーラーを採用したPCではケース内のエアフローは非常に重要で、空間に余裕がなければ空気の流れが悪くなり、それだけ熱がこもりやすくなる。その点、ここまで余裕があればエアフローは良好だし、熱が溜まるような淀みもないため、空冷でもしっかりと冷えるPCとなる。
ケースファンは背面の1つしかないが、さらに冷却性能を高めたいなら、フロントに吸気ファンを増設して使うというのもいいだろう。ケース内に余裕があるため、こういったパーツの追加が簡単に行なえるというのもメリットだ。
ビデオカードには、「GIGABYTE GV-N2060OC-6GD」を採用。これは回転方向が異なる2つのファンを搭載する“オルタネートスピニング”を採用したモデルで、空気の流れを揃えることで、放熱効果を高められるというものだ。
また、ファンの回転はGPUの温度によって制御され、温度が低ければファンを完全に止めるという準ファンレス仕様となっている。高負荷時は高回転となるためそれなりの騒音となるが、ゲームで遊ばない時は非常に静か。常時回転しているものとは違い、普段は静かに使えるというのがメリットだ。
PCパーツへのコダワリは、メモリーにも及んでいる。低価格なノーブランド品ではなく、CFDのカジュアルゲーマー向けモデルとなる「CFD Gaming CX1(W4U2666CX1-8G)」が搭載されていた。
速度はDDR4-2666、容量は8GB×2となる16GBで、速度、容量ともにゲーミングPCとして十分だ。ヒートシンクを装備しているので、高負荷時の安定性を重視したいという人でも安心できる。
ゲーミングPCにつきもののライトアップ機能は、ケースフロント部分がワンポイントで縦線に光る程度とおとなしい。あまり派手に光るのは苦手だという人でも、このくらいならちょうどいい。
もちろん、もっとライトアップして楽しみたいというのであれば、内部の余裕のあるスペースを活かし、さらにライトアップパーツを追加するといいだろう。標準で対応していないというだけで、色々な楽しみ方ができるというのはPCの醍醐味だ。
フロントインターフェースは本体上面、手前部分にまとめられている。用意されているのはUSB×2とヘッドホン出力、マイク入力だ。
タワー型PCは机の上に置くには大きいため、足元に設置することが多いが、インターフェースが上面にあれば足元に置いても使いやすいというのがメリット。もちろん手前側にあるので、机の上に設置しても使いやすい。
USBメモリーなどはもちろんだが、リモート会議への参加でマイクやUSBカメラを一時的に接続したいといったときに、フロントインターフェースは活躍してくれる。
実用性が第一に考えられたミドルクラスゲーミングPC
コスパの良さもあって満足度は高い!
スペックを見るとわかる通り最新パーツは使われていない。しかし、裏を返せば、実績のある手堅い構成となっているだけに、安定性やコスパを重視する人であれば、むしろこの点が魅力になるだろう。
ひとつ気になったのは、ストレージがSSDというのはいいとして、接続がSATAとなっている点。最近はPCIe接続のNVMe対応M.2 SSDの価格も下がってきているだけに、速度面で不利になるSATA接続となっているのが残念だ。
しかし、容量が512GBとなっているのはメリット。多くのコスパ重視ミドルクラスゲーミングPCは250GB止まりで、大型タイトルを2~3ほどインストールすれば容量が足りなくなってしまう。多少速度面で不利になっても、容量の大きい512GBとしているのはありがたい。
もし不満があっても、マザーボード上のM.2スロットは空いているので、自分で増設して使えば問題ない。こうした拡張性があることが、タワー型PCの魅力だ。
購入時の構成でもフルHDゲームを満喫できるだけの性能があり、さらに将来の拡張性も確保されている。「AORUS GPC-02V26OC」は、手ごろな価格で手っ取り早くゲーミングPCが欲しいという人はもちろん、長く使えるメインPCを探している、という人にとっても魅力的な1台だといえるだろう。

著者: ” — news.nicovideo.jp ”