アップルが得た「2兆ドル企業」という“勲章”は、フォートナイトを巡る闘いを不利なものにする | WIRED.jp

自分の会社が史上最も価値のある会社になれば、手放しで喜ぶのが普通の反応だろう。この8月にアップルは、米国企業として初めて「2兆ドルの壁」を突破した。時価総額が2兆ドル(約211兆円)を超えた企業は、ほかに世界でもサウジアラムコしか存在しない。アップルは同社を抜き去ったことで、シリコンが「新しい石油」であることを証明してみせた。

こうしたなか、ゲーム会社のエピックゲームズとの綱渡りのような応酬は、依然として続いている。もしこれが解決していれば、最高経営責任者(CEO)のティム・クックがソーシャル・ディスタンス(社会的な距離)を保った状態で開いたアップルの祝賀会は、より楽しいものになっていたことだろう。

だが、この混乱のなか2兆ドル企業であることは、アップルにとって有利に働かない。

「邪悪な巨人」として描かれたアップル

状況を再確認しよう。アップルは「App Store」を利用してソフトウェアを配信する企業が生み出す収益から、30パーセントの手数料を徴収している。大ヒットゲーム「フォートナイト」を開発するエピックゲームズは、この手数料が高すぎると考えている。

そこでエピックゲームズは、App Storeを迂回して手数料を回避する課金システム「Epic ディレクトペイメント」の提供を開始し、そこで決済するユーザーに対してゲーム内通貨を割引価格で販売するようになった。アップルはこの行為が同社のルールに違反していると主張し、フォートナイトをApp Storeから削除した。

関連記事「フォートナイト」開発元 vs アップル・グーグルの“手数料抗争”は、全世界のスマートフォンユーザーに影響する

なお、同じく30パーセントの手数料を徴収するグーグルに対しても同様の手口を使ったことで、フォートナイトは「Google Play」からも追放された。ただしAndroidの場合は、iPhoneユーザーにはない選択肢として、エピックゲームズからゲームを直接インストールすることが可能になっている。

エピックゲームズのこうした動きは、アップルの巨大な市場支配力に対する挑戦を意図したものであるように思えた。事実、同社はApp Storeでの販売禁止を的確に予測し、アップルを独占的な不正行為で訴訟する準備も事前に整えていた。

また、1984年に発表されたアップルの有名な「Macintosh」のCMを再現した動画まで用意していた。オリジナルのCM映像では、気骨のある弱小勢力であるアップルが、悪の巨人であるIBMからユーザーを解放する姿が描かれていた。それが今回の動画では、アップルこそが邪悪な巨人として描かれている。

エピックゲームズが正しいのだろうか? それとも、iPhoneやiPadでデヴェロッパーが稼いだお金の3分の1近くを奪うアップルのやり方が正しいのだろうか?

「最高の条件だ」とジョブズは言った

アップルが2007年6月に初めてiPhoneを発売したとき、端末にプレインストールされていたネイティヴアプリは数個にすぎなかった(これらのアプリは端末のハードウェアに直接アクセスできることから、より高速なパフォーマンスや位置情報、モーション検出などの特別な機能の実現が可能だった)。

当時のCEOであるスティーブ・ジョブズは、このような制約は安全上の理由によるものであると説明していた。開発者が携帯電話の内部にアクセスできるとなれば、ネットワークが影響を受ける可能性があるというのだ。

しかし、それから間もなく、豊富なアプリを使えるようにすればiPhoneの価値が大幅に高まることが明らかになった。こうしてアップルは08年、App Storeを立ち上げた。セキュリティを維持するためにアップルがストアの管理を一手に担い、すべてのアプリを配信前に審査することになったのだ。

ホスティングやキュレーション、クレジットカード手数料の負担など、アップルはこれらの手間を肩代わりする対価として、アプリが生み出す収益の30パーセントを受け取ることになった。ジョブズは当初、この取り決めの概要を説明したとき、「これは最高の条件だ」と絶賛していた(この点はテック情報サイト「Stratechery」を運営するアナリストのベン・トンプソンが指摘している)。

自在に姿を変えてきたアップル

App Storeについて知っておきたいのは、たとえアップルが一切課金しなかったとしても、同社が恩恵を受けられるという点だ。なぜなら、ストア上のすべてのアプリがiPhoneの利便性を向上させ、端末の売上に貢献するからである。

iPhoneのユーザー数は08年7月の時点で1,000万足らずであり、手数料はそれほど大きく問題視されていなかった。当時、同社の時価総額は1,500億ドル程度にすぎなかったのだ。ところが20年になり、iPhoneのエコシステムは大きな変貌を遂げた。いまやiPhoneのユーザー数は10億人を上回っている。そして今回、時価総額が2兆ドルに達したのだ。

これらを踏まえると、アップルは「T2」と形容すべきかもしれない(少なくとも「T3」と呼ばれるようになるまではの話だ)。T2とは、あのジェームズ・キャメロンによる映画『ターミネーター』(1984年)に続く続編『ターミネーター2』(1991年)の略称でもある。続編では、さらに進化したターミネーターが登場する。自由に変形する能力をもち、その強靭な肉体は作品の終盤まで破壊不可能に思えた。

考えてみれば、アップルはT2に出てくるロボットのような存在だ(もっとも映画オタクならご存知の通り、ロボットの正式名称は「T-1000」である)。ハードウェアの企業として出発したアップルは、アプリケーションとソフトウェアの企業(地図、メール、映像編集のアプリなど)になり、音楽配信の企業、映画スタジオ、決済企業を経て、エピックゲームズが対峙するゲーム会社としての側面も併せもつようになった。つまり、アップルのストアを利用するアプリ開発会社の一部と競合するようになったのである。

途方もない時価総額という色眼鏡

こうしたなか開発会社は、アップルに収益の一部を支払う以外に選択肢はない(昨年のストアでの総収益は約190億ドル=約2兆円だった)。ストアで販売を続けるには、アップルのルールに従わなければならない。アップルに関しては、独自のルールやApp Storeの検索エンジンを使って競合他社を抑え込んでいるとの指摘もあるが、同社はこれを強く否定している。

そこで、T2の力が発揮される。大きなシェアをもつこと自体は違法ではないが、そのシェアを不当に利用すれば独占禁止法違反になることくらい、弁護士でなくてもわかる。特に顧客がほかに選択肢をもたない分野で市場支配力を行使する場合に、そのリスクは高まる。

開放的な市場であれば、開発会社は「いや、30パーセントなんて高すぎる」と言って、別の手段を検討することができる。そして、利益を上げている競合他社が存在しないプラットフォームに移行することが可能だ。あるいは、何らかのソリューションを自前で構築すれば、手数料の支払い自体を回避することができる。

ところが、それを“T2”に対して試みると、10億人の顧客へのアクセスを失うリスクがあるのだ。30パーセントが素晴らしい条件であるというスティーブ・ジョブズの発言が正しいかどうかは、意見が分かれるところだろう。問題なのは、少なくとも2大モバイルプラットフォームのうちのひとつであるApp Storeでは、その条件をのむ以外に選択肢がないという点である。

訴訟の動きは緩慢で、独占禁止法の規制の策定は遅々として進まないものだ。しかし、世間がこの問題をどう受け止めるのかも重要である。アップルは自己弁護のためにどのような主張をしようと、その途方もない時価総額という色眼鏡を通して判断されることになるだろう。誰もT2に対して遠慮などしないのだ。

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著者: ” — wired.jp

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