『ゴースト・オブ・ツシマ』海外で最高評価の理由は? 英米豪紙の注目点 | NewSphere

 PlayStation 4(以下PS4)向けゲームソフト『Ghost of Tsushima』が好評だ。鎌倉時代の日本を舞台に、道を外れた武士が故郷を守るため決起する。米企業が開発したタイトルながら、細部に至るまで日本古来の美意識を感じさせる内容となっている。

◆武士の掟を捨てたサムライ
 『Ghost of Tsushima』は、広大なオープンワールドを舞台に戦略性の高い駆け引きを楽しむ爽快なバトル・アクションだ。プレイヤー自らが武士道に外れた邪道な侍となり、まるで時代劇のように美しい長崎・対馬を自由に駆け、各地に潜む敵勢を討つ。

 時代設定は西暦1274年で、モンゴル帝国が日本を侵攻した「文永の役」がモチーフになっている。対馬に育った武士・境井 仁(さかい じん)は、モンゴル帝国のコトゥン・ハーン率いる軍勢が島に押し寄せるのを目撃し、故郷の危機を悟る。地頭である伯父・志村とともに戦場に立つも、武力の差に破れ、平和だった島は彼らに占拠されてしまう。

 深手を負い戦場に倒れた仁だが、死の淵から辛うじて生還する。そんな彼の運命を変えたのが、野盗・ゆなとの出会いだ。武士の掟や美学にこだわっていては故郷を守れないと彼女に説かれた仁は、冥界から蘇った冥人(くろうど)として、あらゆる邪道な手段を駆使することを覚悟する。愛馬にまたがり単騎野を駆け、対馬の各地に陣を張るモンゴル勢の一掃を試みるというストーリーだ。

◆ファーストパーティーとしては初動最速
 本作は米Sucker Punch Productionsが開発を手がけ、ソニー・ インタラクティブエンタテインメントが販売する。発売後3日間で400万本以上を売上げていることから、ゲーム情報サイト『IGN』は、ファーストパーティー(ゲーム機本体と同一の販社)による独自IP作品としてはPS4最速の初動を記録したと報じている。

 米批評サイト『メタクリティック』によるメタスコアも83点と順調で、100件を超える批評家によるレビューのうち否定的レビューは0件となっている。一般プレーヤーからの反応はさらに芳しく、ファンによる投票スコアは10点中9点台をマークしている。通常であればリリース直後に好意的レビューが殺到し、その後は時の経過とともに平均スコアは下落する傾向にある。しかし本作では発売後2ヶ月の時点でも9.2点ときわめて高い水準を維持している。数万件レベルの十分なレビュー数が寄せられている家庭用ゲーム機向けタイトルとしては、異例のことだ。フォーブス誌(8月12日)に寄稿するゲームライターのポール・タッシ氏は、「少なくともメタクリックのユーザスコアという、この種のことを調べるうえで最も信頼できる指標によれば、近年のあらゆるゲームのなかで最もファンに愛されたタイトル」であると述べている。

◆果てしないフィールドに広がる時代劇
 本作の特徴は、まさに時代劇のなかを縦横無尽に駆けるようなプレイフィールにある。プレイヤー自らが武士となり、対馬の大地を隅々まで探索する。農村を訪ねれば、廃屋から有用なアイテムを入手できることもあるだろう。島の随所では敵勢が野営をしており、見つかればフィールドは戦場と化す。

 戦闘シーンも時代劇そのものだ。互いの動きを読みながらじりじりと間合いを詰める一騎討ちは、昔ながらの武士の作法に則っており、非常に味わい深い。一方、複数の敵を相手にするバトルでは、見応えのある殺陣が展開する。襲いくる敵キャラクターを巧みな刀さばきで次々に斬り捨てる体験は、爽快の一言だ。英ガーディアン紙は、「美学とテーマ性を感じさせる時代劇のような会話劇がすべて盛り込まれている」と述べ、情緒たっぷりのストーリーもプレイヤーの心を捕らえているようだ。

 豪サウス・モーニング・ヘラルド紙(7月17日、以下SMH)は本作の特徴として、自然の美しさ、秩序と争いが入り交じった時代背景、そして探索に軸足を置いたゲーム展開を挙げている。同じオープンワールドRPGで例えるならば『アサシン クリード オデッセイ』と『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を合わせたような作品であり、加えてサムライ映画のような一面も持っていると表現する。

◆邪道な戦い
 伝統的な時代劇を取り入れた『Ghost of Tsushima』だが、その最大のオリジナリティは、むしろ正当な武士の戦いを外れた戦闘スタイルにこそある。高所からの奇襲や弓と爆薬の使用など、時代劇に登場する侍からはおよそ想像もできないような戦法が可能となっている。

 作中、仁は幼少期から伯父・志村に叩き込まれた武士道の精神をかなぐり捨て、実利重視の戦法へと傾いてゆく。武士としてはまずは高らかに名を名乗ってから正面を切って戦いを挑みたいところだが、浜辺での戦いで惨敗した仁は、海外勢を相手にそのような作法が通用しないことを痛感する。そこで掟破りの戦法に手を染めてゆくわけだ。ガーディアン紙は、侵略者を駆逐するために渋々ながら不正な戦術を使い始める、と紹介している。正対の姿勢から刃を交えるだけでなく、屋根の上を忍者のごとく密かに駆けるなど、予想を超えた幅広いアクションが用意されている。

 武士道に背くこれらの行いは戦闘のバラエティを広げるのみならず、物語に深みを加えている。ワシントン・ポスト紙(7月17日)の記者は、「仁が自身の道徳観の根底にあるものを曲げる必要性に揺さぶられるのは見ていて楽しかった」と感想を述べ、主人公の迷いを描いたストーリーを称賛している。出会うメインキャラクターのすべてにこのような興味を惹くバックグラウンド・ストーリーが見え隠れし、各々の生き様を想像させるという趣向だ。

◆圧倒的グラフィックで生きた自然を再現
 作品内では、目を奪うような美しい日本の原風景が圧倒的なグラフィックで再現されている。ガーディアン紙(7月14日)は「これは日本の比類なき自然の美しさを、非の打ちどころがないほど印象的に描いた作品だ」と述べ、その映像美を強調している。

 とはいえ、近年のハードの進化に伴い、映像の美しさだけでは独り勝ちが難しくなっているのも事実だ。そこで『Ghost of Tsushima』は、ガイダンス・システムの工夫によって世界観の統一を図った。時代物にふさわしく、マップは墨で描いたような素材感となっている。また、次に行くべき場所は画面内の風向きによって示されるため、そもそもマップを開いてゲーム内の視点から切り離される機会が最小限に抑えられている。ワシントン・ポスト紙は「こうしたヘルプ要素に表されるようなディテールは、大なり小なりプレイヤーを自然なやり方で(ゲーム内の)世界と結びつけている」と述べ、没入感の高さを評価している。同紙は「イノベーティブな機能」だとも述べ、今後ほかのゲームタイトルでも採用されるような規範となるだろうと予測している。

 ニューヨーク・デイリーニューズ紙も同様に、ミニマップに頼らずに進行できるナビゲーション・システムを高く評価している。マップを参照することでゲーム世界から一瞬引き戻されるような感覚が生じず、無限の広野の探索に没頭できるシステムが好評だ。また、オープンワールドでは一般的な手法になりつつあるが、珍しい動物を追っているうちに体力を回復できる温泉にたどり着くなど、プレイヤーの探索をさりげなくサポートするような自然な誘導も万全だ。こうした体験があるため、対馬という島自体がひとつの生きたキャラクターのように感じられる、と同紙記事は述べる。オープンワールドの基本に立ち返り、広大なフィールドをストレスなく探索することを追求したことが、好意的なレビューにつながっているようだ。

◆アクションゲームに和歌の遊び心
 本作はバトルアクションでありながら、意外な要素として和歌が活躍する。特定の場所で和歌を詠むことでアイテムを入手できたり、ワープ先として登録して移動を有利に進められたりするなどの恩恵がもたらされる。和歌は提示される選択肢を組み合わせて完成するもので、海外のユーザーたちはオリジナルの一首を詠んで楽しんでいるようだ。アクション作品としては異色の要素だが、詩歌への敬意が感じられたことが本作に感嘆する最初のきっかけになったとワシントン・ポスト紙が述べるなど、ちょっとした創作をゲーム内で楽しめる本システムは好評だ。なお、本機能は海外版では「俳句」と呼ばれており、日本語版へのローカライズにあたり「和歌」に修正されている。作中の時代に俳句の様式が確立されていないことが日本国内では広く知られているためだ。

 和歌システムのほかにもSMH誌は、「他愛もないが夢中になってしまうような古い文化」があちこちに仕掛けられていると述べている。キツネを追って古い神社へ導かれたり、神社で小さな御守りを見つけたりと、バトルの合間に日本の伝統的な美意識に触れることができるゲームバランスが好まれているようだ。

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