AppsFlyerカントリーマネージャーが語る,「ヒットゲームを作るためのマネタイズ手法」とは –

 2020年,世界的な“事件”となった新型コロナウイルス。その感染拡大を受け,あらゆる経済社会活動が行えなくなり,人々はこれまでの日常におけるいくつもの価値観を改めることを迫られました。一方で,リモートワークの推進をはじめとする,新型コロナウイルスを契機としたポジティブな影響も少なからず生まれました。その一つに,モバイルアプリがあります。元々スマートフォンの普及などを背景に拡大傾向にあったモバイルアプリ市場は,コロナ禍とともにどのように変化しているのか。また,急成長の筆頭とも言える「ゲーム」ジャンルにおける最新の動き,そして打ち手は何か。

 本稿では,現在勢いを増しているモバイルゲーム市場における最新の動向とともに,一ゲームアプリ担当者にとって,ヒットゲームを生み出すために必要な「マネタイズ」の考え方について,お話します。

急成長を遂げるモバイルゲーム市場

 モバイルゲーム市場は,全世界で7兆1840億円(前年比103.3%)の市場規模を誇り,現在も拡大傾向にあります。そのうち日本も含まれるアジア市場は4兆1016億円(※1)。これは,全世界の57%にも及び,世界最大の市場となります。
 近年モバイルゲーム市場が拡大している要因は大きく3つで,「モバイル端末の普及,端末のパフォーマンス向上,ハイパーカジュアルゲームの台頭」があげられます。

・要因(1):モバイル端末の普及
 海外諸国においては,コンソールゲームやPCよりも先にスマートフォンが普及する場合もあり,そもそもモバイルゲームの浸透が早いことが挙げられます。また日本では,直近5年でスマートフォンの所有率が28.4ポイント増加し,全体のスマートフォン所有率が85.1%にまで拡大。世代別に見ても,10代(87.0%),20代(87.5%),30代(90.0%),40代(85.5%),50代(83.5%),60代(78.0%)と,年代に関係なく,誰もがモバイルゲームを乗せるための“器”を持っている時代になってきていることが分かります。また,コンソールゲームと異なり,多くのモバイルゲームが基本プレイ無料であるため,利用障壁も低いことが後押ししています(※2)。

・要因(2):端末のパフォーマンス向上
 近年は,モバイルゲームの器であるスマートフォン自体の性能が劇的に向上しており,「ゲーミングスマホ」というジャンルも生まれるほど,コンソールやPCでクオリティの高いゲームを楽しんできたコアゲーマーでも十分に満足できるパフォーマンスを発揮できる端末が増加しています。
 端末のパフォーマンス向上により,提供できるゲームコンテンツ,クオリティ,スピードが格段に上がり,ユーザーが体験できる幅・深さが大きな広がりを見せています。さらに,これまでコンソールゲームなどで一般的であった「買い切り型」に対して,今ではコンソールゲームも近しいですが,インターネットに接続していることで季節イベントや不具合のアップデートなど,よりよいものに細かく無料で更新していける点がモバイルゲームの特徴にもなっています。

・要因(3):ハイパーカジュアルゲームの台頭
 昨今,急成長するモバイルゲーム市場を牽引しているゲームカテゴリーがあります。それが,言語説明を必要とせず誰でも簡単に遊べる,「ハイパーカジュアルゲーム」です。ハイパーカジュアルゲームの台頭により,今までゲームアプリをプレイしなかったような人たちにもゲームアプリが浸透していったことや,アプリのマネタイズの転換,ユーザーマインドの変化などが市場拡大の牽引に大きく起因していると考えられます。

 2020年2月以降,新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が増加したことに伴い,コンソールゲームやPCゲームもコロナ禍以前と比較して利用時間が増加しており,さらにNintendo Switch「あつまれ どうぶつの森」の大ヒットやPlayStation 5の発売など,ゲーム市場でも今後の動向が注目されています。しかし,モバイルゲームにおいても世界における1週間あたりの新規インストール数が過去最高の12億件,日本でもコロナ禍以前の2020年1月に対して1.5倍の新規アプリインストール数を記録するなど,コロナ禍によるポジティブな影響を受け,プレイ時間の高止まりが続いています。

 また,今後新たな生活様式下で社会経済活動が戻るなかで,ゲーム専用の端末ではないスマートフォンは,コンソールに比べ接触頻度と接触タイミングが圧倒的に多く,場所や時間に縛られないため,ウィズコロナ,アフターコロナと呼ばれる新様式下のライフスタイルにおいても,消費者にとって最も身近なデバイスであり続けると予想されている,企業にとって重要なチャネルであるといえます。では,今後企業はどのようなアプリをつくっていくべきなのか,モバイルゲーム市場の中では何が起きているのかもう少し具体的にお話します。

興隆するゲーム市場で今“稼げるアプリ”

 モバイルゲーム市場は今後も継続的な拡大が予測されていますが,その中でも今トレンドと呼ぶべき潮流は,やはり「ハイパーカジュアルゲーム」です。世界では「Voodoo」,「BitMango」,日本では「Play Master」などが主なタイトルで,このカテゴリーは,2017年頃から北米を中心にランキング上位を席巻。現在でもメインストリームとなっています。なぜこれほどまでにハイパーカジュアルゲームは大きな流れに変化していったのか,その理由に「マネタイズ」があります。

 ハイパーカジュアルゲームのマネタイズを構成する要素は大きく2つあり,1つ目は,「莫大な開発資金を必要とせず大きな市場を狙えること」です。

 ハイパーカジュアルゲームは,言語を問わずチュートリアルも必要としないうえ,プレイ障壁も低く無料という特徴を持っています。そのため,世界という大きな市場に対して,国ごとにローカライズせず一つのバージョンでリリースできるのです。また,シンプルなゲーム性で成立するため,ミッドコアやハードコアに対して開発費を低く抑えられるというメリットもあります。つまりハイパーカジュアルゲームは,莫大な開発資金を必要とせず初めから大きな市場を狙うことができる比較的“ローリスク・ハイリターン”なカテゴリーであると言えるのです。

 ハイパーカジュアルゲームは,そのプレイ障壁の低さとシンプルさから,インストールされやすいメリットとアンインストールされやすいデメリットを併せ持っていますが,特に日本においては,短い時間でもすぐに始められていつでもやめられることや口コミで広がりやすいといったゲーム特性が,通勤通学時間に代表される独自のライフスタイルに合致しています。ただし,今後リモートでのライフスタイルが一般化し,「通勤エコシステム」が破壊されていくのであれば,ゲームとの集中的な接点である電車内という「聖地」を失うことになり,可処分時間がNetflixに代表される動画サービスに奪われる可能性もあり,継続してデータを観測していく必要があります。

 ハイパーカジュアルゲームのマネタイズを構成する2つ目の要素は,「マネタイズ手法の変化」です。
 日本では,4〜5年前までアプリのマネタイズ手法は「アプリ内課金」が7〜8割を占めるほど主流でしたが,日本のGDP(国内総生産),つまり国民の「可処分所得」が低下していくのと同時に,潮目が変わりはじめました。徐々にユーザーの嗜好が無料で楽しく遊ぶことにシフトしていき,そのなかで,ユーザーは“無料で楽しく遊べる”ことと引き換えに“広告”を受け入れるようになりました。さらに,これまで自由度が低かった広告も技術の発展により,プレイアブルアドや動画広告といった,ゲームアプリのインストール障壁を大きく下げる,より獲得効率が高い広告フォーマットが生まれたことを後押しに,アプリのマネタイズの主流は「アプリ内広告」へと変化したのです。

 アプリにおいて広告によるマネタイズ手法が確立されたことで,アプリ開発会社はより開発資金を投下できるようになり,より良いアプリの増加や競争の激化,ユーザーの増加によってさらに開発会社は投資できる,といったポジティブな循環が生まれつつあります。
 現在,YouTubeなどでも広告を見たうえで動画コンテンツを楽しむことが一般的になったように,無料で楽しむためにこれまで嫌われてきた広告が受容されるようになったことは,ユーザーに起きた大きなマインドの変化です。

 このように,ゲームアプリのマーケティングにおいては「マネタイズ」を理解し,最適化させることが,ヒットゲームの創出に直結するのです。

直近10年の世界のモバイルゲームのトレンド

2009年頃〜 カジュアルゲームが主流。無料モデルが台頭
2012年頃〜 「キャンディークラッシュ」に代表されるソーシャル要素を持つカジュアルゲームが一世を風靡
2014年頃〜 「Clash of Clans」を始めとするミッドコアタイトルが話題
2016年頃〜 「Mobile Strike」といったコアゲーマー層に向けたゲームが登場
2017年頃〜 ハイパーカジュアルゲームが北米のApp StoreやGoogle Playの無料ランキングを中心に上位を席巻

アプリ戦略に欠かせない“広告不正”の話

 ここまでマネタイズの重要性を話してきましたが,ゲームアプリの戦略においては,マネタイズと合わせて担当者が考えるべき重要なことがあります。それは,利用者を増やすための「(1)ユーザー獲得」と収益を増やすための「(2)マネタイズ」のサイクルを最適化することです。このサイクルを最適化していく上で指標となるのが,出稿した広告費に対していくら売上が得られたのかを示す指標「ROAS(Return On Advertising Spend)=広告費回収率」です。

 私がアプリ開発企業の担当者に対してとくにお話したいのは,この最も重要なKPI「ROAS」についてです。企業では,広告経由のインストール数をKPIとしている担当者も多く,インストール数=担当者の評価につながる場合,インストール数をひたすら追い求めてしまっていることがあります。しかし,本当に担当者が考えるべき指標は,自社の経営指標であり,実際に出稿した広告費がどのくらいの収益を生んだのか,つまりROASなのです。
 ユーザー獲得経路と広告収益の関係を把握することで,ユーザー獲得戦略のより正確な最適化を行い,ROASの精度を向上させる。それにより,「(1)ユーザー獲得」と「(2)マネタイズ」のサイクルが同時に最適化されていくのです。

 そして,ここで必ず触れなくてはならないのが,担当者につけ込む「広告不正(アドフラウド)」の存在です。
 「広告不正」とは,無効なインプレッションやクリックによって成約件数や効果を不正に水増しすることで,広告主や広告代理店から広告費を奪い取る,マーケティング業界で近年急増している詐欺のことです。日本における広告費全体の10%近くがこの被害に遭っているというデータもあり,知らないうちに自社の広告費が不正に騙し取られている可能性がある,決して他人事ではない詐欺なのです(AppsFlyerによる2020年版モバイル広告不正データ調査レポートは
こちら)。また,広告経由のインストール数を自身のKPIとして追いかける担当者が,広告不正の存在に気づいていても目をつぶってしまうこともあるなど,組織構造を含め誰が“犯人”なのか特定し難い詐欺でもあります。

 さらに,最近はインストールに関する広告不正だけでなく,アプリ内イベント(購入)を不正に水増しする技術も発展してきており,ROASを指標においていても広告不正の被害を受けてしまう危険性があります。
 当社でも,広告不正を防ぐためのアトリビューションツールを常にアップデートすることで未然から事後においても広告不正を見破る技術をアプリ開発企業・担当者に提供しています。ですが,まずは大前提として,自社のデータをしっかりと分析することで,正しい指標に対して正しい分析を行っていくことが今後より重要となっていきます。

勝つアプリのマネタイズとは

 興隆するマーケットで勝つアプリをつくるためには,マネタイズを理解してそのサイクルを最適化することが必要です。現在モバイルゲーム市場を席巻しているハイパーカジュアルゲームも,数年前までの日本ではまったく主流のマネタイズ手法ではありませんでした。ユーザーの消費性向の変化が,モバイルゲーム市場のマネタイズの大きな転換になったのです。さらに,広告不正を行う不正事業者は,市場の動きに合わせてあらゆる形で手を伸ばしてきます。そうした不正の仕組みとともに重要な指標を理解しながら,モバイルゲーム市場において,ユーザーがどのように考え動いているのかを捉えましょう。そのためには,これまでの感覚的なマーケティング判断ではなく,より正確なデータに基づいた最適な判断を下すことが,日本でトレンドとなりつつあるアプリ内広告を含む,アプリの収益源の多様化を実現することになります。

 ここまで,モバイルゲーム市場において,マーケットどのように動いているのか,どういったジャンルが伸びているのか,さらに重要なアプリマーケティングの考え方についてお話してきました。ゲームアプリは,今後も月単位,週単位でユーザーやマーケットに変化が起きていくことが予想されます。また,iOS14のユーザープライバシーに関するアップデートを来年控えているなか,従来のマーケティング手法にも大きく転換が訪れようとしています。そのなかで,アプリパブリッシャ,アプリマーケター・担当者一人ひとりが,本当に考えるべき指標を忘れずに,「(1)ユーザー獲得」と「(2)マネタイズ」のサイクルを最適化していくことで,モバイルゲーム市場はさらなる発展をしていくでしょう。

※1:ファミ通「モバイルゲーム白書2020」
※2:ジャストシステム調査
※3:AppAnnie「2020年最新版:ゲーム市場動向レポート」

大坪直哉
33歳まで舞台俳優でありながらcMBAホルダーであり,カントリーマネジャー。俳優を辞めた後,検索連動型広告の大手,米Overtureに入社。12年には仏Criteoに転職し,アジア太平洋地域担当ディレクターとしてマーケットシェア拡大に貢献する。15年8月よりAppsFlyerの日本カントリーマネジャーに就任。現在NYのInstitute of Integrative Nutritionsという統合食養学専門学校にリモートで通学中の超健康オタク。TOKYO MX『ええじゃないか!』にMCとしてレギュラー出演中

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