「Ghost of Tsushima」レビュー –

 「Ghost of Tsushima」をプレイしていて何より印象に残るのが、風景の美しさだ。

 草原の緑、赤々とした紅葉、黄色一面のイチョウ、そして、真っ白に包まれる雪世界……。日本では親しみ深い自然の風景が再現されていながら、色遣いに関してはかなりのビビッドさだ。行く先々の景色はどこも惚れ惚れするほどの美しさであり、とにかくフォトジェニック。さらには同じ場所でも朝日、夕暮れ、月明かりと時間帯や天候によって表情を変える。

 本作では実際に起こった対馬への蒙古襲撃をベースに、島を蹂躙する蒙古への逆襲を描いている。島を我が物顔で歩く蒙古勢に対し、誰も彼もが血まみれになる凄惨なストーリーが展開していく。しかし、だからこそ、華やかな風景が印象的に映える。過度とも言えるほど美しく描かれた舞台と血生臭さのコントラストは、本作の強烈なオリジナリティだ。

美しい風景と血まみれ剣戟のコントラストが効いている

 そして肝心のストーリーでは、ただ蒙古から対馬を奪還するだけに留まらない、一大スペクタクルとでも言うべきドラマが展開する。裏切り、対立、貫く意志、友情。今回は全編を通して日本語音声でプレイしたが、セリフ回しと演技の妙によって、途中から大河ドラマを見ているような気分に浸っていた。特に中盤から後半にかけては、主人公境井仁の心のゆらぎや数奇な運命に、胸が締め付けられるようだった。

 本作はいわゆるオープンワールドアクションゲームであり、大まかなプレイサイクルや進み方などは前例を踏襲している。ただし黒澤明をはじめとした、日本の時代劇を意識して作られた本作は「オープンワールドでプレイする時代劇ってこんなに楽しいんだ!」という喜びに満ちている。では実際のところ手触りはどのような感じなのか。本稿では、さらにポイントを絞ってお伝えしていきたい。

蒙古の駆逐を誓う境井仁

【『Ghost of Tsushima』時代劇映画風トレーラー】

教えに背き、蒙古を討つ。それでも悩む仁の葛藤

 「Ghost of Tsushima」は、オープンワールドとなった対馬を駆け回るアクションアドベンチャーだ。対馬には村や拠点があり、様々な場所に困っている人がいて、特定の場所は蒙古に占拠されている。メインストーリーやサブストーリーをこなしながら、対馬を蒙古から取り返すことが最終的な目的となる。

 本作がオープンワールドアクションとしてとても特殊なのは、他のタイトルではごく当たり前の「背後から敵を暗殺する」ことが“不名誉”とされていることではないかと思う。

 なぜなら、仁は「侍」だから。侍は島で暮らす人々を率いる存在であり、皆の模範となるような生き方や振る舞いをしなければならない。“闇に紛れて敵を撃つ”などの行為は卑怯であり、「侍の誉れ」に反するというわけだ。仁は、叔父で対馬の地頭の志村に幼少より「虚に乗じるは勇気なき証拠」と言われて育ってきた。戦うなら正々堂々、闇討ちなどもってのほか。

父亡きあとの仁を迎え入れ、仁に「武士とは何か」を伝え続けてきた志村

 しかし仁は、この「誉れ」にずっと悩むことになる。侍として、その矜持をまっとうすることこそが正しい道だとわかっているのだが、誉れだけでは島を蹂躙する圧倒的でしたたかな蒙古の軍勢は打ち破れない。それは最も尊敬する志村の教えにも背くことになるが、島を守るため、何より対馬の民を救うために仁は侍の道を外れることを選ぶ。

 実際、ゲームの最序盤で仁が初めて敵を闇討ちする場面がある。「対馬のために仕方ない」と仁は自分に言い聞かせるのだが、敵の背後の近づき、殺した瞬間、ショックのあまりに茫然自失としてしまう。

 つまり本作において、闇討ちや暗器を使うような攻撃は「後ろめたい行為」。仁もプレーヤーも後ろめたさを常に感じながら、蒙古を闇に葬っていくことになる。暗殺を重ねれば重ねるほど、自分が侍ではなくなっていく嫌な感じが、「Ghost of Tsushima」ならではのプレイ感だ。

敵の背後を取ることは「卑怯」。侍の道を外れた誉れなき行為だ

 そして実際にプレイすると、現場はかなりの血みどろだ。戦闘では暗器による搦手も使えるが、基本は刀による切り合いアクション。いわば、時代劇の見せ場である大立ち回りの殺陣が全編を通して繰り広げられる感じだ。蒙古や賊を後ろからも正面からもバッタバッタと切り倒し、気づけば死体の山が転がっている。

 仁やプレーヤーとしては倒されないために必死なわけだが、その姿を見た対馬の人は「お侍様の戦い方じゃない」、「人間ではなく鬼なのではないか」と逆に恐怖を感じてしまう。そして1人で蒙古たちを切り刻む「冥人(くろうど)」の存在が噂となり、仁は人々に「冥人様」と呼ばれるようになっていく。冥人であることを徐々に受け入れていく仁。本作のストーリーは、ここから本番を迎えていく……。

名を上げる境井を討ち取ろうとする牢人との一騎討ちもある

暗器、弓、太刀、全部使ってまとめて死体の山を築く

 戦闘アクションに関しては、成長要素が大きくふたつある。ひとつは暗器、もうひとつは太刀の扱いだ。

 暗器には、敵の動きを一瞬奪う「くない」、爆発する「てつはう」、周囲の視界を奪う「煙玉」などがあり、成長することで新たな暗器を使用可能になる。暗器は隠密行動で役立つほか、大勢の敵に囲まれたときにも力を発揮する。侍としては邪道だが、これも勝つための手段だ。

蒙古の火薬を利用した「てつはう」や、これを敵にくっつくようにした「とりもち」は、爆発して敵にダメージを与える

 一方の太刀は、仁のアクションや「型」が成長する。アクションでは、たとえば敵の防御無効の攻撃が防御できるようになったり、走りながら斬れるようになったりなど。また「型」には「石の型」や「水の型」といったものがあり、これは敵が持つ武器によって効果が変わる。

 「石の型」は、剣のみを持つ敵に強い。石の型の強攻撃で敵を斬りつけると、防御されても敵のよろめきダメージが上がっていく。よろめきダメージが上限を超えると、敵がふらついて一気に攻撃を叩き込める。同じように、「水の型」は盾持ち、「風の型」は槍兵に効果的だ。

相手に合わせて型を変えるのが攻略の基礎。こちらは「風の型」で出せる蹴り

 要素は徐々に増えるとはいえ、状況はクルクルと変わる。敵の持っている武器に合わせてリアルタイムに有効な型を選択していかないと、ひとりの敵を倒すことすら難しくなる。また窮地を脱する暗器も、切り替えに手間取っていれば敵にすぐに間合いを詰められる。

 つまり敵や戦況にあわせて次の手段と型をビシバシ切り替えながら戦う必要がある。もしかしたらここを複雑と感じる方もいるかもしれないが、慣れれば爽快なことこの上ない。型を変え、攻撃を弾き飛ばし、会得した必殺技を繰り出す。いくら囲まれても全員を返り討ちにする仁の最強感を、どこまでも体験することができる。

 そして素晴らしいのが、敵を斬ったあとの刀を収めるアクション。タッチパッドを右に払うとできる操作で、腕で血を拭ったり、ピッと刀を振って血を払ったりする。その後、刀をスーッと鞘に収める所作にも余韻があって、ここにこそ侍のかっこよさを感じる。プレイ上は決して必要ない操作なのだが、あまりにかっこいいので戦闘後はいちいちやってしまうほどだった。

 そして物語が進むに連れ、蒙古も逃げ出すほど、仁の恐ろしさが頂点に達していくのだが……。それは、ぜひプレイして確かめていただきたい。

シュピッと刀を払う動作。ちなみにこちらはモノクロ映画風のビジュアルになる「黒澤モード」で撮影した。画面がざらつき、音声の加工も変化する。モノクロでもフォトジェニックさが一切衰えないのがすごい

対馬で訪れるべきロケーションの数々

 対馬には、蒙古の拠点以外にも訪れるべき地がたくさんある。神社、狐の稲荷、温泉などがそうだ。

 それぞれの場所を訪れると、特定ステータスを上昇する「護符」が手に入ったり、体力の上限が増加したりする。本作では、目的地を決めると「風」がなびいて案内してくれるほか、近くに訪れていないポイントがあると鳥が現われて、その場所まで案内してくれる。

通常は人がたどり着けないような場所にある神社

旅をしていると、どこかで必ず狐と出会うだろう

 中でも印象的なのが、和歌を詠む場所だ。ここでは、美しい風景から浮かんでくる言葉を選び、和歌にできる。選択肢はいくつか出てくるが、正解はないのでどれを選んでもOK。詠み終われば、その句が刻まれた鉢巻(見た目のカスタマイズ要素)が手に入る。本作の風景の美しさを改めて感じられるほか、仁の気持ちにも感情移入できる。あえてミニゲーム的にしないことで情緒を感じさせる、ユニークな要素だ。

 対馬の旅では、目的地に向かって先を急ぐもよし、ふと出会う鳥の案内に従って寄り道をしてみるのもよしだ。一度訪れたチェックポイントはほとんどがファストトラベルの対象になるので、訪れておいて損はない。何かありそうなら行ってみて、恩恵を預かりつつ、美しい風景を楽しんでおくくらいでちょうどいいかと思う。

 ファストトラベルに関して言うと、本作のローディングは恐ろしくはやい。こうして、あえて言っておきたくなるくらいにはやい。筆者はPS4(Proではない)でプレイを進めたが、ロードは体感にして数秒、ひとつめのTIPSが読み終わらないくらいでプレイが再開するので特に最初は驚いた。さすがに人の多い大きな寺などでは十数秒ほどかかるが、ロード速度はこの規模のオープンワールドゲームでは異例ではないかと思う。これによって、プレイがかなり快適に進められる。

心を静め、思うことと情景を重ねて詠む。本作の中でも静かな時間が流れる

引き裂かれそうになりながら、それでも信じた道を進む

 そして思わず気になるといえば、仲間たちの物語を体験するサブストーリーだ。たとえば、野盗のゆな、弓の名手である石川先生、安達家の女武芸者である安達政子、酒売りの堅二など。

 ゆなは、対馬の武士と蒙古軍が最初に激突した小茂田浜の決戦で、仁の命を助けてくれた人物。野盗だが、「弟を救ってほしい」と仁に持ちかけつつ、闇討ちや計略の術を伝えてくれる。サブストーリーでは、ゆなの出生にも踏み込むことになる。

仁の命の恩人となるゆな

 また石川先生は跡取りとして目をかけていた弟子、巴に裏切られて追いかけていると言うし、安達政子は家族を皆殺しにされた恨みを晴らすべく各地を回っている。堅二は商いをしているが、蒙古を騙そうとしてしょっちゅうトラブルに巻き込まれている。

 特に堅二は本作でのコメディリリーフで、地獄の中で笑いを提供してくれる貴重な人物。割とダメなところもあるのだが、それでも蒙古に抵抗するため尽力してくれるナイスガイでもある。ちゃんと情も持っており、筆者のお気に入りの人物だ。

調子のいいことばかり言っている堅二。憎めないところがある

 彼らは蒙古にともに立ち向かう仲間であり、それゆえにエピソードもキャラクターも掘り下げられている。蒙古を倒しながら、彼らを助太刀することで、仲間たちが背負った運命も見届けられる。そうすることで、物語全体により深みが出て楽しめることと思う。

 本作は蒙古への逆襲が描かれるが、決して綺麗に物語が進まないところがいい。殺陣アクションは豪快で、最後に敵を叩き切る瞬間などは爽快の一言に尽きるが、あらゆる手段で蒙古を殺す冥人の所業は、よくも悪くも周りに影響を与えていく。

 いつまでも燻る大きな悩みに仁は引き裂かれそうになりながら、それでも信じた道を歩み続けるところが、本作の泣きのポイントだ。最後の最後まで脚本が練られており、プレイ後は「いい侍の物語を見た」という感想に行き着いた。間違いなく、侍ファンなら必携の超大作である。

本作は風景がきれいなので、フォトモードがかなり捗る。様々な地で記念写真を撮るのも楽しみのひとつとなっている

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