マリオの生みの親・宮本茂さんに海外メディアがインタビュー –



2020年12月19日、任天堂はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にオープンする新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の一部詳細を明らかにしました。2021年2月についにオープンするスーパー・ニンテンドー・ワールドは、任天堂のゲームやキャラクターを現実世界に再現したテーマパークであり、任天堂のこれまでの集大成とも言えるものです。そのスーパー・ニンテンドー・ワールドのデザインや設計を監修する宮本茂さんに、ニュースメディアのThe New Yorkerがインタビューしています。

Shigeru Miyamoto Wants to Create a Kinder World | The New Yorker
https://www.newyorker.com/culture/the-new-yorker-interview/shigeru-miyamoto-wants-to-create-a-kinder-world

1977年に24歳で任天堂に入社した宮本さんは、マリオやドンキーコングなど数々の人気キャラクターを生み出してきた人物。任天堂は宮本さんをメディアから遠ざける傾向があり、あまり多くのインタビュー記事が出回ることはありませんが、The New Yorkerが同氏のインタビューに成功しています。

任天堂本社でインタビューに受け答えしているという宮本さんに対して、The New Yorkerが「任天堂本社はウィリー・ウォンカのチョコレート工場のような、人々を喜ばせる素晴らしい発明でいっぱいの秘密の建物になっているのでしょうか?」と質問。

これに対して宮本さんは、「本社の外観はとてもシンプルかつ清潔な正方形の建物となっています。本社の受付を病院の待合室に例える人もいるほどです」「従業員はオフィスに好きなオモチャやフィギュアを持ち込むことができますが、取り組んでいるプロジェクトに応じてデスクを切り替えるシステムがあるため、従業員には決まったデスクがありません。そのため、従業員の身の回りのものはそれほど多くありません。もしも子どもたちがオフィス見学に来たなら、ちょっとつまらないと思うでしょうね。ユニークな創造物や仕事の成果物は従業員ひとりひとりの中にあるので。ユニークな外観などは必要ないと思っています」と回答し、デザイン性に富んだ有名企業のオフィスとは打って変わってシンプルな見た目の任天堂のオフィスについて説明しています。


続いて投げかけられたのは「仕事上で興奮する事柄は?」という質問。

この問いに、「私はいまだに週末ですらゲームについて考えることに多くの時間を費やしています」「月曜日になって仕事に戻ることに興奮しており、時には週末に仕事に関するメールを送信することもあります。ただ、これは周りの人々からの反応はあまりよくありませんね」と、勤続40年以上にしてなおゲーム開発への強い意欲をのぞかせた宮本さん。さらに、現在の仕事はUSJに建設中のスーパー・ニンテンドー・ワールドの監修だけでなく、任天堂が開発中のモバイルゲームにも携わっているとして、「自宅でこれらのゲームのテストプレイが可能なので、週末にテストプレイするゲームの長いリストを持っています」と語りました。

2020年で35周年を迎えたスーパーマリオブラザーズについて、宮本さんは「スーパーマリオが有名になった直後、誰かが『宮本はウォルト・ディズニーの地位に達した』と言いました。当時、ミッキーマウスはすでに50歳を超えていましたが、マリオはせいぜい2、3歳でしかなかったことを覚えています。そのため、追いつくためにさまざまな要素が必要でした。モノの品質を決めるのは、それが作成されてから数十年後にまだ求められているかどうかにかかっていると私は考えています。ウォルト・ディズニーはディズニーのすべてを作成したわけではありませんが、これだけ長持ちするシンボルを作成できたという点を、私は賞賛したいです」と語り、度々ライバルと称されてきたディズニーをあらためて賞賛しています。


さらに、The New Yorkerは「新型コロナウイルスのパンデミック期間中、世界中の親御さんたちが子どもたちがゲームと健全な関係を築くにはどうすれば良いのかと四苦八苦したことと思います。このことについて自分のお子さんと交渉したことはありますか?」という一風変わった質問も投げかけています。

この質問に対して、宮本さんは「ゲームはとても楽しいものなので、子どもたちがプレイをやめられないと感じているのでしょう。私はそれを理解し、共感することが重要だと考えています。例えば、次のセーブポイントに到達するまで子どもがゲームをやめられないということを理解するには、親がゲームをプレイすることが重要です。私の子どもの場合、子どもたちが常にゲームと適切な関係を維持していたという点が非常に幸運でした。そのため、私からゲームのプレイ時間を制限したり、ゲーム機を奪ったりする必要はありませんでした」と語りました。

また、宮本さんの家庭ではすべてのゲーム機が宮本さんのものであり、子どもたちは「父親からゲーム機を借りている」という意識があったため、「ルールに従えない場合にはゲーム機を取り上げられることを理解していたのでは」と宮本さんは語っています。なお、宮本さんによると「子どもたちはセガのゲームをたくさんプレイしていました」とのことです。

加えて、宮本さんはつい先日、孫と一緒に「進め!キノピオ隊長」を遊ぶ機会があったことを明かしています。宮本さんは「進め!キノピオ隊長」をプレイしていて「孫の目が輝いていました」と語り、「ゲームをプレイする中で、5歳の頭の中で3D構造が構築されていくのを見ることができました。これは彼の成長に大いに役立つと思います」とも語っています。


続いて、The New Yorkerが「ゲームを媒体として信じており、文学や映画が提供するのとは異なる洞察を与えてくれると信じています。また、ゲームが人の生活の中で少しスペースを取り過ぎてしまう可能性があることを認識している部分もあります。ゲームは要求が大きな魅力的なものです。宮本さんの仕事はプレイヤーの関心を維持することですが、その役割に難しさを感じたことはありますか?」と質問しています。

これについて、宮本さんは「プレイヤーがいつでも辞めることができるようなゲームを作るのは少し難しいです。ゲームは人の好奇心や興味によってプレイされるものと感じているため、そういった感情を刺激する何か(ゲーム)に遭遇した時、魅了されるのは自然なことだと思います。とはいうものの、私が作ってきたのは生産的でも創造的でもないことをプレイヤーに行わせ、時間を無駄にするようなものではありません。他のすべてのゲームでは、シーンスキップやロード時間の短縮などを通して無駄時間の省略を試みていますが、私は不必要なルールを排除することでプレイヤーの時間を奪わないようにしています」と語りました。

さらに、「ゲームのようなインタラクティブメディアの興味深い点は、プレイヤーが問題に取り組み、解決策を考え出し、その解決策を試すことでその結果を体験できることです。さらにその後、次の動きを計画することができます。このような試行錯誤のプロセスはプレイヤーの心の中にインタラクティブな世界を構築します。これこそが私がゲームをデザインする際にいつも心に留めていることです」と語っています。


NINTENDO64の「ゴールデンアイ」を開発したレアのマーティン・ホリス氏は、開発時に宮本さんから「ゲームが終われば病院に行って、敵全員と握手するようなゲームにするのはどうかな?」という提案を受けたことを明かしています。これはゴールデンアイの中であまりにも多くの人が死ぬためです。

『ゴールデンアイ 007』開発者が語る 「宮本茂はゴールデンアイから殺人を除きたがっていた」 | AUTOMATON
https://automaton-media.com/articles/newsjp/miyamoto-tried-to-removd-the-killing/

ゴールデンアイのようなシューティングゲームがゲーム業界を支配するようになった現状について、宮本さんは「例えばボールを投げてターゲットが打つ、といった単純な動作から人間は喜びを体験することができます。しかし、ゲームに関して言えば、単一の喜びに焦点を合わせることに少しだけ抵抗があります。人間はさまざまな方法で楽しみを体験することが可能です。理想的には、ゲームデザイナーはさまざまな楽しみを享受する方法を探求するでしょう。シンプルなメカニズムを取り入れているゲームスタジオがあることは必ずしも悪いことではないと思いますが、そのようなシンプルなゲームの売れ行きが良いというだけで、皆がそういったゲームを開発するというのは理想的な状況とは思えません。開発者にとって、プレイヤーの喜びを引き出すための新しい方法を見つけることこそが素晴らしいことだと思います」と語りました。

さらに、「私は単にすべてのモンスターを殺してしまってもかまわないという考えに抵抗感を覚えます。モンスターであっても何らかの動機があり、彼らが敵として立ちはだかるには何かしらの理由があります。これは私が頻繁に考えていることです。例えば映画に戦艦が沈むシーンがあるとして、これは外から見ると勝利の象徴かもしれません。しかし、制作者側は沈んでいく船の人々の視点を描く可能性もあります。ゲーム開発者も、常にひとつの視点からシーンを描くのではなく、視点を変え、より多くのステップを踏むようにしてゲームを描くことは素晴らしいことだと思います」とも語っています。


さらに、「今後のキャリアにおける野心は?」という質問に対して、宮本さんは「任天堂の事業の核心は、ハードウェアとソフトウェアの調和を生み出すことです。これに約10年の時間がかかりましたが、今では若い世代もこの基本原則を十分に守れるようになっていると感じています。私としては、これからも自分の興味を追求していきたいと考えています。任天堂はスーパー・ニンテンドー・ワールドのような、新しいデザイン分野に進出しつつあります。考えてみると、テーマパークのデザインはゲームのデザインに似ていますが、ハードウェアの側面に完全に焦点を当てているといえます。ある意味、この分野で私はまだアマチュアです。しかし、テーマパークの乗り物がよりインタラクティブになるにつれ、我々の専門知識がより有効に活用されるようになっていきます」と、スーパー・ニンテンドー・ワールドの監修に新しい楽しみを見出していると述べました。

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