『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』レビュー。パーフェクトな着地を決めたシリーズファン納得の1作 –

 スケートボード界のレジェンド、トニー・ホーク氏の名を冠したスケボーゲームのシリーズ最新作、プレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』が2020年9月4日にアクティビジョンより発売された。本記事では、“そこそこ熱心な『トニー・ホーク』シリーズファン”を自称する、元ファミ通.comニュース班のキモ次郎による、非常に暑苦しいレビュー記事をお届けする。

ボロボロのアパートで『トニー・ホーク』シリーズに熱中したあの頃

 築40年の木造2階建て、風呂なし、ガス給湯器なし、エアコンなしの6畳和室1K。いまから20年近く前の話とはいえ、僕が大学の4年間を過ごしたアパートは、その当時でも十分すぎるほどにクラシックだった……なんて書くと、陰鬱とした苦学生を想像するかもしれないが、実際のところ僕は4年間を非常に楽しく過ごした。そのクラシックなアパート、立地だけは最高だったのだ。

 大学生にとって“最高の立地”とは何か? 答えは人によってさまざまだと思うが、僕の場合は「学校から近い」っていうところが本当に最高だった。学校が近ければ一限目の授業に出席するのも苦じゃないし、授業と授業のあいだに空いた時間があれば家に帰ってノンビリすることもできる。そして何よりも重要なのが“友だちが溜まりやすい”ことだった。

 最高の立地ゆえに溜まり場となったアパートで、僕らはゲームに没頭した。ボロボロのアパートだったけど、壁際のスチールラックに置かれた14インチのブラウン管テレビ(念のため言っておくと、これも当時としてはだいぶクラシックなことだ)とゲーム機があれば、そこは最高のエンターテインメント空間になる。対戦格闘ゲームに燃えたこともあったし、一騎当千の快感に酔いしれたこともあったし、スパイになって撃ち合ったこともあった。

 みんなが僕の部屋にゲームを持ち寄ったから、選択肢はいくらでもあった。でも、ほとんどの時間を、僕らはスケボーカルチャーの本場アメリカ――正確に言うなら『トニー・ホーク プロ・スケーター』の世界で過ごしたのだ……え、「そんなゲームは知らない」って?

 確かに『トニー・ホーク プロ・スケーター』シリーズは日本では“ど”が付くほどマイナーなタイトルだ。でも、アメリカ本国において“トニー・ホーク”と言ったら、それはもはやカルチャーアイコンのひとつに数えられるくらい“ど”メジャーな人物でありブランドであり……なんて、海外の話をしてもしかたないか。

 とりあえず僕から言えることは、「アホでバカでエクストリームなスポーツゲーム」が遊びたいと思っている人にとって『トニー・ホーク プロ・スケーター』シリーズほど、その願望にマッチするタイトルは、たぶんほかにはないってことだ。まあ、そんな願望を抱く人がどれくらいいるかは知らないけど。

『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』レビュー。パーフェクトな着地を決めたシリーズファン納得の1作

結論『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』は買って大丈夫ですよ!

 前置きが長いうえに、内容が自己陶酔甚だしい思い出話だったことをまずお詫びする。これは「このレビュー記事の執筆者は大変に暑苦しいテンションで『トニー・ホーク プロ・スケーター』シリーズのことを語りますよ!」という宣言みたいなものなので、どうか生暖かい気持ちで受け入れてもらえればありがたい。

 というわけで、2020年9月4日にアクティビジョンより発売されたプレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』(以下、『THPS 1+2』)の話だ。シリーズ経験者であればすでに購入済み、あるいは「これ、買って大丈夫なの?」という不安を抱えていると思う。熱心なファンであればあるほど、その不安は大きいと思う。

 『THPS』シリーズとは、スケートボード界の生きる伝説“トニー・ホーク”の名を冠したスケボーがテーマの“アホでバカでエクストリームなスポーツゲーム”。日本国内で据え置き機向けのタイトルが発売されるのは、2012年にXbox Live アーケードで配信された『Tony Hawk’s Pro Skater HD』以来、じつに8年ぶり。

 この長過ぎるブランクだけでも十分に不安要素だが、それに加えて前述の『HD』が潔いまでに「過去作の映像をキレイにしました!」だけの内容だったことや、日本未発売のナンバリング最新作『トニー・ホーク プロ・スケーター 5』がバグの多さや作り込み不足で酷評の嵐だった(『5』に関して筆者は未プレイなので、ニュース記事などを読んだだけの知識であることを断っておく)という悲しい現実もある。

 “『トニー・ホーク プロ・スケーター』は死んだシリーズ”であると、そこそこ熱心なファンの僕ですら考えていた。だから『THPS 1+2』国内発売決定の報を聞いたときは期待よりも不安のほうが大きかったのだ。

 そもそも、シリーズ初代と『2』をリマスターって言われても「それ『HD』ですでにやったことじゃん!」という感想だし、マルチプレイ搭載って言われても『プロジェクト8』のマルチの過疎っぷりを知っている身としてはまったく期待できない。

 でも、日本発売されたからには買わずにいられないのがファンというものである。

 ちなみに僕は現在ゲーム業界関係者でもなんでもないため、レビュー用のサンプルロムを借りることはできない。だから、発売日の仕事帰りに近所の家電量販店でソフトを買った。

 帰宅し、プレイステーション4の電源を入れてソフトを起動し、最初のステージ“Warehouse”を何度かプレイして(たぶん2時間くらいだったと思う)……「大丈夫なの?」への答えを確信して、この原稿を書き始めた。同時にファミ通編集部時代の先輩編集者に2年ぶりくらいに連絡を入れ、不躾に「ご無沙汰しております。急な話で恐縮ですがレビュー記事を書かせてもらえませんか?」とお願いをした。

 その願いは無事に叶い、いまこうして皆さんの前に非常に暑苦しいレビュー記事が展開されているというわけだ。

 で、肝心の「大丈夫なの?」への答えだが。自信を持って断言しよう。

 大丈夫!

 ……発売からすでにひと月以上が経っていて、我ながら遅きに失する感は否めないが、まだ買っていないシリーズファンは安心して『THPS 1+2』を買ってもらえればと思う。

『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』レビュー。パーフェクトな着地を決めたシリーズファン納得の1作

『THPS 1+2』はリマスタータイトルのお手本のような仕上がり

 『THPS 1+2』は、タイトル名のとおりシリーズ1作目と2作目をガッチャンコし、最新の技術でリマスターしたもの。

 前述の『Tony Hawk’s Pro Skater HD』も方向性としては同じだが、『1』と『2』のステージは完全収録ではなく“セレクト”されたもので、トリックのシステムはよく言えばオリジナルに忠実、悪く言えば洗練されていない(後日パッチで改善はされた)……など、何かと思うところが多い内容だった(興味がある人は僕が過去に書いたレビュー記事からいろいろと察してほしい)。

 その点『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』はどうかと言うと、ステージは完全収録されており、さらにトリックのシステムは、個人的にシリーズ最良と考えている『トニー・ホーク プロ・スケーター 4』(日本発売時のタイトルは『2003』)のものに準拠している。つまり、リバート、ウォールライド、リップトリック、スペシャルトリックがあるわけで、コンボがつなげやすく、シックスコア(最高にヤバいスコアみたいな意味)を狙うのもそんなに難しくない。ちなみに、「俺はオリジナルの操作にこだわりがあるんだ!」という人向けには、そういう機能もちゃんと搭載されているので安心してほしい。

 グラフィック面も「目をみはるほどの美しさ!」とまでは行かないが、シリーズ史上最高レベルのものであることは間違いなく、象徴とも言えるステージ“Warehouse”も、より薄汚れていい感じだ。

 ローカライズがかなりしっかりされていて、チュートリアルモードやゲーム内で聞こえるヤジ(みたいなやつ)が日本語音声になっているのが地味に感動するポイントだったりする。僕が記憶する限り、日本国内で発売された『THPS』シリーズに日本語音声が入るのは初めてのことではないだろうか?(違ったらごめんなさい)

 あと、忘れちゃいけないのが音楽。『THPS』シリーズでは、スケボーカルチャーとの親和性が髙いパンクロックを中心に、数多くのノリノリサウンド(死語)がゲーム内に収録されていることがウリのひとつなっている。過去のシリーズ作では基本、曲は流しっぱなしだったが、『THPS 1+2』では早送り(1曲飛ばし)ができるようになっている。じみーーな変更点ながら、僕的にはこれがじつはすごーーくうれしいことだったりする。

 恥ずかしながら僕は音楽方面には明るくないので、収録ラインアップの良し悪しについてはよくわからないが、プレイをしていれば知識がないなりに好きな曲というのは当然出てくる。そして「あー、なんとなくあの好きな曲を聴きながら遊びたいな」というときに、サクッと曲を飛ばせるのはすごーーくありがたいのだ。

 世にリマスタータイトルは数あれど、『THPS 1+2』ほどに丁寧でオリジナルをリスペクトしたものはそう多くない。リマスター作品のお手本と言いたくなる仕上がりなのだ。

『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』レビュー。パーフェクトな着地を決めたシリーズファン納得の1作

「シリーズ最高傑作!」と言いたいけど、言えない理由

 ……と、上記の内容は、購入直後に数時間プレイした時点でわかった/感じたことだ。それから1ヵ月以上が経ち、プレイ時間は数十時間を超えた現在、僕は『THPS 1+2』という作品のことをつぎのように考えている。

 誤解を恐れずに言うと、シリーズをプレイしてきた人が『THPS 1+2』を遊んだとして、そこに新たな楽しさを発見することはないだろう。コンボをつなげてより高いスコアを目指すのも、プロスケーターの特典映像を観るためにキャラを育て続けるのも、無限ループできるレールを見つけて天文学的スコアを目指すのも、ぜんぶ過去に1回やったことがあるもので、新鮮味はない。

 スケートパークを作れる&シェアできるモードもあるが、僕はハマれなかった(ここにハマれる人はきっと本作に対する評価もガラッと違うものになると思う)。オンラインマルチも、いくつかのルールがあるものの、コレという区切りがなく延々とプレイが続くだけで、正直味気ない感は否めない(でも、現時点では過疎っておらず、いつ行ってもマッチングするのは感動的で、『おまえら『プロジェクト8』のときどこいたんだよぉ!』と泣き出そうになる)。

 なんて書くと、すごく退屈しているように感じるかもしれないが、じつはそんなことはまったくない。コンボをつなげてより高いスコアを目指すのも、プロスケーターの特典映像を観るためにキャラを育て続けるのも、無限ループできるレールを見つけて天文学的スコアを目指すのも、過去に1回やったことはあるが、それこそ僕が『THPS』シリーズに求めていたものなのだから。

 散々シリーズを遊んできた身として、確かに新鮮味はない。でも、食べなれたメシこそがどんなメシよりもウマいのと同じように、『THPS 1+2』が提供してくれる――あえて言ってしまえば“マンネリ感”は、どれもやっぱりアホみたいに超楽しいし、先に書いた日本語音声の収録楽曲の頭出しなど、よく見知ったはずのことの細かな部分がちょっとずつ快適になったおかげで、とにかくストレスフリーになっており、つまりそのなんだ、とりあえず遊べば遊ぶほど「やっぱ『THP』って最高――――!!」となるわけだ。

 心情としては、『THPS 1+2』のことを「シリーズ最高傑作!」と興奮して叫びたいくらいに気に入っている。でも、“シリーズ最高傑作”という表現はシリーズの基礎を踏襲しつつ、新たな価値観を提供できるものにこそふさわしいと思う。

 というわけで、(日本国内では)8年ぶりに復活した『THPS』シリーズの内容が、ズッコケることなくパーフフェクトな着地を決めたことに僕はシリーズファンとして最大限の賛辞を贈りたい。そして、本作の成功を機にシリーズが再び活気づくことで、そう遠くない未来に『THPS』シリーズ最高傑作が登場してくれることを願っている(『5』は未プレイですが)。

『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』レビュー。パーフェクトな着地を決めたシリーズファン納得の1作

『THPS』シリーズ未経験者へのおすすめポイント

 以上、我ながら暑苦しいテンションで『THPS 1+2』を紹介してきたが、内容があまりにシリーズファン向けになってしまったというわけで、最後にシリーズ未経験者に向けて、おすすめポイントとアドバイスをお届けしたいと思う。

 冒頭の自己陶酔メモリーにもある通り、僕(ら)は学生時代に『THPS』シリーズにドハマリしていた。『ストリートファイタ-』シリーズはもちろん、『桃鉄』も『マリオカート』も『スマブラ』もあったのに、僕らがもっとも遊んだのは『THPS』シリーズだった、と言えば、どれくらいハマっていたかがわかってもらえると思う(念のため言っておくと、ほかの作品を貶す意図は一切ないし、『マリオカート』に至ってはアパート隣室の“自称・九州チャンピオン”と年がら年中対戦するくらい好きだった)。

 と同時に、こう思うはずだ。「ってことは『THPS』シリーズって、対戦とか協力プレイがおもしろいの?」と。作品によっては画面分割によるふたりプレイモードはあるが、ハッキリ言ってそれらは熱中できる類のものではなかった。僕(ら)は、大勢が集まってひたすらシングルモードで遊んでいたのである。

 なぜそんな酔狂なことを……と思うかもしれないが、“ひとり用のゲームをみんなで遊ぶ”という行為は、現在30代後半の僕からすれば、決して変なことではないし、むしろ原初的なゲーム体験に通じるところがある。噛み砕いて言えば「ちょっとやらせてよ」なゲーム体験である。

 噛み砕いたつもりが、よりわかりづらくなってしまった気もするが、僕が幼少時代のころ、ゲームには“友だちの背中越し”という楽しみかたもあった(いまもあるかもしれない)。歯ごたえのあるアクションゲームをプレイする人と、その人の背中越しに画面をみて脳内プレイに浸る……ってやつだ。そしてこのゲームプレイスタイルには「ちょっとやらせてよ」がつきものでもある。

 くり返されるトライ&エラーのなかで、背中側のひとりが攻略法を閃き「俺ならこの難所をクリアーできるはずだ」という確信とともに「ちょっとやらせてよ」と発し、主役が交代する。僕らが『THPS』シリーズをみんなで楽しんでいるときにも、何度この「ちょっとやらせてよ」が発せられたことか!そして、それがなんとも楽しく、僕らを夢中にさせたのだ。

 『THPS』シリーズはハッキリ言って難度が高い。最初は“コンボをつなげる”ことすら意味不明だろう。だから、投げ出す人がいたとしても、責めることはできない。一方で、カッコいいプレイに到達するまでの距離は意外と短い。

 レールトリックからレールトリックをつなげるという超シンプルなコンボでも、画面上ではかなり“映える”映像だ。そこにフリップトリックを挟もうものなら、もう最高にイカしたスケボー映像のできあがりである。

 最初に乗り越える壁はやや高いが、一旦超えてしまえばとたんにやれることは広がるし、同じステージでも見える景色がぜんぜん変わってくる。学生時代の僕(ら)は『THPS』シリーズをいっしょに遊びながら、何度も“見える景色が変わる瞬間”を味わってきたのだ(そして、そのあいだに数えきれないほどの「ちょっとやらせてよ」が発動された)。

 昨今の状況的に、みんなで肩寄せあってプレイ! というのは現実的ではないだろう。でも、いまはオンラインという便利なものがある。ぜひ、“回線寄せ合って”開放的な『THPS』の世界でスケートを楽しんでもらいたい。

『トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2』レビュー。パーフェクトな着地を決めたシリーズファン納得の1作

執筆者紹介:キモ次郎

 元ファミ通編集部ニュース班。『THPS』をきっかけにスケボーカルチャーにハマった人は、『DOGTOWN & Z-BOYS』と『ボーンズ・ブリゲード』というドキュメンタリー映画もおすすめ! とくに後者はトニー・ホークが所属したチームの話なので、観れば『THPS』シリーズがもっと楽しくなること間違いなしです。



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