韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート –

会場入り口に掲げられた大きな垂れ幕

 韓国e-Sports界で、久しぶりに「ロイヤルローダー(Royal Roader)」という言葉が飛び交った。これはかつて「StarCraft: Brood War」のプロリーグが全盛期だったころに生まれた言葉で、「大会初出場の選手またはチームが優勝すること」を指す。

 今回この言葉の主人公となったのは、初参戦チームの「GC BUSAN」だ。いわば歴史的な瞬間であったわけだが、韓国の「Overwatch」大会を初めて現地観戦した筆者にとっては興味深いことがほかにもたくさんあったので、今回はそういった会場レポートを中心にお届けしたい。

そもそも「APEX」とはどんな大会なのか

 「APEX」とは、Blizzard Entertainmentが開催し、ケーブルTVチャンネルOGNが運営する韓国の「Overwatch」公式リーグである。昨年10月にシーズン1が開幕し、今回シーズン4を迎えた。全16チームが優勝を争うリーグ形式で、2部リーグ「APEX Challengers」との入れ替え戦も実施されている。普段はソウル市内にあるOGNのe-Sports専用スタジアムで開催されており、5,000ウォン(約500円)でチケットが販売されている。

 決勝戦は10月21日に、ソウル市の北側に隣接している高陽市にあるKINTEXという展示場で開催された。チケットはS席が15,000ウォン(約1,500円)、A席が10,000ウォン(約1,000円)と普段より割高であったにもかかわらず、3,000枚準備されたチケットが発売開始からわずか5分で完売したというのだから驚きだ。韓国における「Overwatch」のe-Sports人気を物語っていると言えるのではないだろうか。

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート APEX決勝戦は毎回数千人の観客が会場に詰め掛けている

APEX決勝戦は毎回数千人の観客が会場に詰め掛けている

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート ステージ中央に置かれた優勝トロフィー(写真提供:OGN)

ステージ中央に置かれた優勝トロフィー(写真提供:OGN)

試合は最終戦までもつれ込む接戦に!

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート

 8月に開幕した「APEX」シーズン4。約2カ月に渡って行なわれてきたリーグの決勝戦は、シーズン2で準優勝の経験もある大人気チームRunAwayと、初参戦ながら昨シーズン優勝のLunatic-Haiと準優勝のC9 KONGDOOに勝利した驚異の新規チームGC BUSANの対戦となった。両チームはベスト8で一度対戦しており、そのときは3-2でRunAwayが勝利している。今回もRunAwayが貫禄を見せつけて勝利するのか、それともGC BUSANがリベンジを果たすのか、注目が集まった。

 「Nepal」で行なわれた1戦目、ラウンドのたびにGC BUSANが先に拠点を押さえる展開に。Profit選手のトレーサーやGesture選手のウィンストンが活躍を見せ、一気に80~90%以上占有するなど有利に試合を運び、GC BUSANの勝利となった。

 しかし2戦目の「Hollywood」では、早めに拠点Aを制圧しペイロードを目的地に進めることに成功したRunAwayが有利にゲームを展開した。防衛側になっても、RunAwayのディフェンスが上手い。最終的にラウンドを制したRunAwayは、続く3戦目の「Hanamura」でもA地点B地点ともに素早く占拠する強さを発揮。相手の占拠の阻止にも成功し、スコアを2-1としてリードを広げた。

 ピンチに追い込まれたGC BUSANが4戦目の戦場に選んだのは、ここまで1度も戦ったことのない「Watchpoint: Gibraltar」。準備してきたとみられるProfit選手のゲンジが防衛側でも攻撃側でも活躍を見せて勝利し、GC BUSANが2-2に持ち込むことに成功した。

 RunAwayが得意とする「Temple of Anubis」を選んだ5戦目は、両チームともにA地点に素早く到達する接戦となったが、最終的に粘り強さを発揮してB地点のディフェンスに努めたGC BUSANが勝利し3勝目をマーク。スコア上のリードを奪い、優勝まであと1勝に迫った。

 とはいえ、ここで引き下がるわけにいかないRunAway。「Dorado」で行なわれた6戦目では、Haksal選手のゲンジの活躍などでGC BUSANの攻撃をなんとか抑え込む。攻撃側になってからもHaksal選手のゲンジとStitch選手のトレーサーの活躍が光り、ペイロードを目的地点まで運び、勝利。勝負は最終戦に持ち込まれた。

 7戦目のマップは「Eichenwalde」。両者一歩も譲らない接戦となったが、最終的にGC BUSANが粘り強いディフェンスで相手を撃退!4-3でGC BUSANの優勝となった。

 なお、当日の試合はTwitchにて配信されていたため(英語・韓国語)、試合を動画で確認することも可能だ。熱戦の模様を是非その目で確かめて欲しい。

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート (キャプチャ提供:OGN)
韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート (キャプチャ提供:OGN)

(キャプチャ提供:OGN)

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート
韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート

表彰式とインタビュー、そして日本のファンに向けて

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート 左上からHocury監督、Gesture選手、ARIEL選手、Choanggunコーチ。左下からHooreg選手、Profit選手、HaGoPeun選手、Closer選手、WOOHYAL選手

左上からHocury監督、Gesture選手、ARIEL選手、Choanggunコーチ。左下からHooreg選手、Profit選手、HaGoPeun選手、Closer選手、WOOHYAL選手

 試合終了後に表彰式が行なわれ、まずは準優勝となったRunAwayに賞金4,000万ウォン(約400万円)が授与された。会場からは、ファンの間で事前に決めてあったのであろう「RunAwayお疲れさま!」という声援が届けられた。この声援に、思わずHaksal選手が涙を見せる一幕も。会場は、悔し涙を流しながら選手たちを見つめるRunAwayの女性ファンであふれかえっていた。

 そして優勝したGC BUSANには、賞金1億ウォン(約1,000万円)と優勝トロフィーが贈られた。さらにMVPにはProfit選手が選ばれ、賞金200万ウォン(約20万円)が別途授与された。ステージ上で実施されたインタビューでProfit選手は、自身のゲンジのプレイに対し「95点」と評価。5点マイナスした理由は「龍撃剣を上手く使えなかったから」だとか。

 また、HaGoPeun選手は大会のたびに本拠地の釜山からソウルまで飛行機で楽に移動できた点について、「スポンサーであるAir Busanのおかげだ」と語っている。最後にHooreg選手がメンバーに向けて、Gesture選手がファンに向けて感謝の言葉を述べ、大会は幕を閉じた。

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート 残念ながら2度目の準優勝という結果に終わったRunAwayの選手たち

残念ながら2度目の準優勝という結果に終わったRunAwayの選手たち

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート 見事優勝を果たし「ロイヤルローダー」となったGC BUSANの選手たち

見事優勝を果たし「ロイヤルローダー」となったGC BUSANの選手たち

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート プレスルームでは各メディアの記者が集まってリアルタイムで記事をアップしている

プレスルームでは各メディアの記者が集まってリアルタイムで記事をアップしている

 その後、選手たちはプレスルームへ移動し、メディア向けのインタビューが別途行なわれた。韓国のe-Sports大会ではおなじみの形式で、各メディアの記者たちが挙手をして質問をしていき、選手たちがそれに回答していく。「Closer選手がTemple of Anubisにおいて守備陣営で最後の危ないシーンでデッドせずに耐えたのが素晴らしかったが、どのような状況だったのか」など、ステージ上ではなかったようなゲーム内の細かい点についても質問が及んだ。これに対しCloser選手は、「普段から乱戦の練習をよくしていて、ああいった場面で誰が中に入っていき、誰が出て行かなければならないのかをきちんと把握していたため耐えることができた」と説明している。

韓国「Overwatch」公式リーグ「APEX」決勝戦会場レポート 左からHocury監督、Gesture選手

左からHocury監督、Gesture選手

 ところで筆者が1番注目していたのは、ズバリGesture選手だ。なぜなら、彼はかつてCornという名前でRascal Jesterや7th heavenといった日本のチームに所属し、「League of Legends」の日本リーグ「LJL」に出場していた選手だからである。さらに彼とともに日本で生活していたHocuryコーチも、GC BUSANの監督として活動している。今回特別に、彼らから日本のファンに向けてメッセージをもらったので紹介したい。

Gesture選手

 「LoL」の選手として日本で活動したあと帰国して「Overwatch」に興味を持ち、上手くやれる自信もあったので転向しました。日本で応援してくれていたファンの皆さんのことももちろん覚えているので、「Overwatch」の選手になってしまって申し訳ない気持ちもあります。それでもこのように優勝するところをお見せすることができて、嬉しいです。

Hocury監督

 僕の場合、e-Sportsの仕事を本格的に始めたのがLJLでした。もちろん日本のファンの皆さんにも感謝していますが、日本でコーチとして学んだことが自分にとって役に立っていて非常にありがたい気持ちです。今回「Overwatch」のチームの監督をやることになって、選手たちのやる気を引き出す方法や練習のさせ方など、日本での経験を生かすことができたと思います。

 ちなみにこの大会の翌日、彼らは「APAC Premier 2017」に参加するため中国上海へと旅立った。この大会には中国、韓国、台湾、オーストラリア、アメリカの計12チームが出場。10月29日に行なわれた決勝戦の対戦カードが再びGC BUSAN対RunAwayとなり注目を集めたが、4-1でGC BUSANが優勝している。実力が本物であることを証明した彼らの活躍に、今後も目が離せない。

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